歳時記「重陽の節句」

九月になると重陽の節句があります。菊祭りと昔は言いましたね。この頃はいつまでも夏が長く残暑が厳しいせいなのでしょうか。この時期にあまり菊の花を愛でる姿を町で見かけなくなりました。

昔は菊の鉢を大切に育てている盆栽好きのお父さんがよくいましたが、この頃はそんなお父さんはどこに行ってしまったのでしょうか。

重陽の節句は五節句の一つで、人日の七草、雛祭り、端午の節句、七夕、重陽の節句、これで一年の節句が五回あるので五節句と言っていました。

時代は変わり暦の通りに季節が変化しているとは限らなくなり、いつの間にか祝日でもない五節句は忘れてしまいがちです。

そんな、五節句のひとつの菊祭りでは、昔は菊酒を飲んだものです。菊を浮かせたり、漬けこんだりして、菊の花の効能が長寿の薬だと言われていたところから菊酒は生まれたといいます。昔は不老長寿を祝うこの日が五節句の中で最も大切な日とされていました。

その他には「菊綿」という行事があり、前の晩に菊花に真綿をまとわせ、そこに降りた露で身体を拭い、邪気を祓ったのだといいます。

菊綿はさすがに現代ではなかなかできませんが、食用の菊で、菊酒を飲むことは十分できますね。黄色い菊お花がお酒の盃に浮いている姿は何ともいえない日本的な情緒を感じます。いい香りがしてきそうです。

重陽は9月9日とされていて9の字が重なるので重陽と呼ばれています。古くはもっと解りやすく重九とも云ったそうです。昔はとても盛んでしたが、日本では明治以降の近代文化の伝来とともに急速に廃れているようです。

やはり暦が今のグレゴリオ暦に変わったのも明治時代ですから、暦の変化が、人々の生活の風習を大きく変えていったのですね。

菊の花の香りはとても華やかですが、どこか寂し気で哀愁を感じるのは、こうした時代の流れに押し流された歴史がかもち出す情緒の為なのでしょう。

いつか忘れかけていた重陽の菊祭りを忙しい令和の現代の人々にも思い出して欲しいものです。菊祭りは菊人形が飾られる冬になってからが、この頃ではほとんどになりました。菊の花とともに重陽の節句があることをいつまでも忘れずに伝えて行きたいと私は考えます。俳句にはそうした日本の歴史を大切に継承するような文化が、まだまだ生きずいています。

菊香る金箔沈む盃に浮き・・・上野貴子